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会計と簿記

会計と簿記は何が違う?それぞれの意味や関係性について解説

「会計」と「簿記」はどちらも企業などで使用されるお金の動きに関わる言葉ですが、意味は異なっています。一体、何が違うのでしょうか。会計をきちんと理解するうえで簿記は重要な知識です。あいまいになりやすい2つの言葉だからこそ、それぞれの意味を明確にしておくことは重要です。そこで、この記事では、会計と簿記のそれぞれの意味と関係性について詳しく説明します。

1. 「会計」の基本的な意味とは?

「会計」とは、英語だと「報告」という意味を持つ「Accounting」と訳されるとおり、そもそもの意味はお金の計算や取引に関しての報告をすることです。日常生活の中でも、飲食店で代金を支払う時などに使用される言葉で、ビジネスシーンであれば、会社の財務状況など会社のお金の状態を報告することを「会計」と表現します。財務状況とは、企業が事業を行うにあたり必要となる資金の調達や予算の管理、資金運用などについての実際の状況です。プライベートのお金の出し入れとは違い、企業の会計では、お金や物の動きを正確に記録し、一定の期間ごとに報告することが求められます。
ただし、企業の活動に伴った財務状況を報告する「会計」は、報告する相手や目的によって大きく2つの種類に分けることができます。まず、1つ目が、経営者や従業員といった会社の内部の人に対して報告をするための「管理会計」です。管理会計は、社内向けに経営管理の情報を提供することが目的となっていて、会計を作成することは強制ではなく任意となっています。しかし、任意とはいえ、設備投資や事業撤退など今後の事業をどうするかについての様々なな社内の意思決定は、管理会計の情報をもとにして進められることが一般的です。このため、作成の義務はないものの、企業にとっては重要な報告となります。
また、会計には、もう1つの種類として「財務会計」もあります。財務会計は、「制度会計」などとも呼ばれ、経営状況などを明らかにするための報告です。投資家など社外の利害関係者が出資するか否かを決める際などに参照されます。また、税金の申告書などでも使用されるため、全ての企業にとって実施することは義務です。さらに、各企業が自由な形で書類作成できる管理会計とは異なり、財務会計は統一されたルールに基づいて書類作成する必要があります。

2. 「簿記」の基本的な意味とは?

「簿記」とは、「帳簿」を意味する「book」と「管理する」という意味を持つ「keeping」が組み合わさった「Bookkeeping」と英訳されるとおり、取引を管理するために帳簿に記録する方法をいいます。企業は、商品やサービスを売ったり買ったり、従業員に給与を支払ったりなどする中で、様々なお金や物を動かしながら活動をすることが一般的です。そして、企業の財産が現状でどれくらいあるのか、どのくらいの利益をあげているのかといった情報は日々のお金や物の出入りの動きを記録した簿記があることで正しく把握できるようになります。
そもそも、簿記の目的は、財務諸表を作成することです。財務諸表とは、企業の経営状態などを数字で示したもので、毎年決算期に税務署等に提出することが義務付けられている書類の総称です。複数ある財務諸表の中でも、特に重要となるのが、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の3つで、「財務三表」とも呼ばれています。損益計算書は英語でProfit and Loss Statement、略してP/Lと書き、会社の利益を示す書類です。また、貸借対照表は正式にはBalance Sheet、略してB/Sと表示し、会社の財産を示す表をいいます。さらに、キャッシュフロー計算書は、Cash Flow Statement、略してC/Sと書き、収支の増減を明らかにした書類のことです。企業の収支の動きは企業経営を分析する際に役立ちます。
簿記は、記録する際の書き方や計算の仕方などについて決まりがあり、ルールに則って帳簿を付けていくことが求められます。記録する方法には簡易的な帳簿となる単式簿記と、取引の動きだけではなく動きの詳細も記録する複式簿記の2種類があり、単式簿記に記載されるのは原則として収支だけです。対して、複式簿記は、取引を資産、負債、純資産、収益、費用と大きく5つのグループに分類し、1つの取引を「借方」と「貸方」に分けて記録することが書き方のルールとなっています。
具体的には、損益計算書では費用は借方に収益は貸方に記載するのが決まりです。そして、貸借対照表だと資産が借方で、負債や純資産は貸方へと書き込みます。損益計算書と貸借対照表は別の要素が記載されているため、一見すると、異なった内容を示した全く別の書類のようにも見えます。しかし、実際には、貸借対照表の純資産に含まれる毎年度の利益を累積した剰余金は、損益計算書の税引き後の当期純利益も含んでいるため、2つの書類はつながっているのです。そして、複式簿記は1つの取引を2つの見方で記録する方法であるため、常につながっている貸借対照表と損益計算書は同時並行で作成することが可能となっています。

3. 会計と簿記はどう関係してる?

会計も簿記も企業のお金の動きに関わることですが、簿記とは取引を記録することであり、その目的はあくまでも財務諸表の作成です。複式簿記では作成の仕方などにルールがあるため、実際にどのように作ればよいのかについての知識が必要となります。そして、その知識をもとに実際に財務諸表を作成することが簿記であるということができます。これに対して、会計は報告することを目的としたプロセスであり、会社に関わる数字を取り扱うことができるように財務諸表の見方を正しく把握するための知識と方法を得るための活動ということができます。
具体的な流れで見ると、企業活動のなかで行われた取引を貸方と借方とに仕訳をし、それを帳簿に記録するまでが簿記です。そして、その簿記に記録した情報をまとめて、整理したうえで報告するのが会計となります。つまり、「会計」という考え方の構成要素の1つとして「簿記」があり、会計をするために必要となる財務諸表の作成を実行するための手段が簿記となっているのです。会計は簿記の知識なくしては理解しきれないものであるため、正しい会計を成り立たせるためには、簿記の知識をきちんと身に付けることは必須となります。会計学を習得したいという人が必ず、簿記の学習から入るのはそのためです。

4. 簿記を学べば会計も理解しやすくなる

会計を正しく理解するために必要とされる基礎的な知識が簿記です。簿記は、あくまでも財務諸表の作成に必要となる記録の方法を身に付けるための学問ですが、基本の概念をきちんと理解しておけば、会計学として学ぶ財務諸表論も理解しやすくなります。取引の分類や仕訳の方法など覚えておかなければいけないルールがあることから、簿記を暗記で学ぶ学問と捉える人も少なくありません。たとえば、仕訳であれば、「現金が増えたときには借方に記入し、現金が減ったら貸方に記載する」といった覚え方です。
しかし、ただの丸暗記で簿記を学んでいると、応用が効かなくなってしまいます。簿記の学習は、確かに仕訳が中心となりますが、全ては会計につながることであり、会計学の一部です。簿記の学習中に広い視野を持つことは簡単ではありませんが、常に会計学を意識した姿勢で学習するだけでも、仕訳の重要さを理解しやすくなります。会計学に進んだときに困らないためにも、簿記学習の段階から理論的にきちんと理解をすることが重要となるのです。

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