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簿記の基礎

簿記の基礎が知りたい!基礎を固めて知識を深めよう!

簿記といえば、毎年多くの人が受験する非常に人気の高い資格の一つです。とはいえ、実際にどのような目的で活用されるものなのか、内容を詳しく知らないという人も多いでしょう。そんな人々のために、今回は簿記に関するさまざまな基礎知識を紹介していきます。基礎をしっかりと固め、資格取得を目指して知識を深めていきましょう。

1. 簿記の基礎となる流れを知ろう!

Ⅰ. そもそも簿記とは?

簿記とは、企業や個人事業主が、一定期間における経済取引による資産・負債・純資産・費用・収益の増減を明確に帳簿に記録することをいいます。利益や損失がいくら出たのかをその年ごとに記録することで、企業経営等が順調に行われているのかどうかが判断しやすくなるのです。一般家庭においても、家計簿などで収入や支出の管理をしている家庭も多いでしょう。お金の出入りをしっかりと把握することで、無駄な出費を省いたり将来の人生設計に役立てたりすることができます。それと同じで、企業や個人事業主も簿記によりお金の動きを管理し、次の年の経営戦略を立てる際に役立てるなどしているというわけです。
また、企業や個人事業主が簿記を必要とする大きな理由には、「税金を正しく支払うため」という点もあります。事業によって利益が出た場合、法律に従って国などへ税金を納める義務が生じます。もし、お金の動きを正しく把握していなければ、いくら利益が出たのかを算出できず、税金をきちんと支払えなくなるでしょう。これでは企業にとっても国にとっても不都合となるため、簿記という一定のルールにしたがってお金の動きを記録し、正しい税額の算出に役立てているのです。

Ⅱ. 簿記の基礎的な流れ

簿記は、どの企業でも一定の流れにしたがって作成されます。まず、事業を運営していくうえでどんな取引が生じたのかを把握します。たとえば、どの商品がいくらで何個売れたのか、その結果いくら利益が出たのかなどの情報を正確に集めるのです。会計上の取引を把握したら、「仕訳帳」に仕訳として記帳します。その後、勘定科目別に仕訳帳から「総勘定元帳」へと転記しなければなりません。さらに、総勘定元帳の各勘定科目の残高を計算し、「試算表」へと転記します。最後に、これらの結果をもとに決算整理を行い、「決算書」を作成して終了です。
決算書とは財務諸表とも呼ばれるもので、企業がその事業年度に行った取引の全てを集計し、経営成績や財政状態などを明確にまとめた書類のことです。社内はもちろん、社外の利害関係者に開示されることも珍しくありません。決算書は、第三者が企業の経営状態を判断するうえで大きな指標となる存在なので、正しい決算書を作成することこそが簿記本来の目的であるともいえます。

2. 押さえておきたい簿記の基礎1:仕訳

簿記の基礎中の基礎ともいえるのが、「仕訳」です。仕訳とは、発生した取引を「借方」「貸方」の2つに分けて帳簿などに記載する作業を指し、帳簿の左側が借方、右側が貸方となります。例えば、とある商品をお客さんに売って代金を受け取った場合、左側の借方は「現金」、そして右側の貸方は「売上」としてそれぞれ金額も記載しなければなりません。1つの取引を2つに区分けして記載しているため、借方と貸方は必ず金額が一致するのがポイントです。
また、仕訳の際は必ず2つ以上の「勘定科目」が必要になることも覚えておきましょう。例えば、300万円の土地を購入した際は「土地300万円」と仕訳すれば良いと思いがちですが、この内容だとどのように代金を支払ったかが分かりません。その場でキャッシュで支払ったのか、それとも後日振込をすることにしてまだ支払っていないのかなど、取引の詳細が分からないのです。正しい取引の履歴を残すためには、単に購入したものの名前と代金だけを記録すれば良いわけではありません。仮に現金で購入したとすれば、「土地を購入して300万円の現金が減少した」というところまで記載しなければならないのです。
もし、勘定科目を1つしか使わずに仕訳をすると、取引の詳細が分からず決算書が正しく作成できない可能性もあります。これでは仕訳を記録する意味がありませんし、正確な税金が納められず国からペナルティを科せられてしまうおそれもあるでしょう。そうならないように2つ以上の勘定科目を用い、取引の内容をより詳しく記録しているというわけです。

3. 押さえておきたい簿記の基礎2:勘定科目

勘定科目とは、仕訳をする際に必ず必要になる項目名のようなものです。大まかに5つのグループに分かれており、企業の財政状態を知るための勘定科目は「資産」「負債」「純資産」の3つです。残りの2つ、「収益」と「費用」という勘定科目は、企業の経営成績を知るために用いられます。「資産」はその名の通り、企業が保有する様々な財産のことです。現金や預金、土地や建物などの直接的な財産のほか、売掛金や受取手形、貸付金など将来的に回収できるはずの財産も含まれます。
「負債」は、いわゆる借金のようなものです。金融機関から借り入れた融資などはもちろん、企業が商品を仕入れた際、その場で代金を支払うのではなく後日まとめて支払う契約を交わしていれば、それも負債となります。支払手形や未払金、預り金なども同様に負債となるので注意しましょう。「純資産」は、資産から負債を差し引いて残ったものです。主な勘定科目としては、資本金や資本準備金、利益準備金や任意積立金などが該当します。
「収益」は、事業によって得られた売上のことであり、純粋な利益とは異なるので注意が必要です。例えば、商品の売上が500万円あった場合、仕入れで300万円かかっていれば利益は200万円となります。収益は200万円ではなく売上である500万円のほうを指しており、仕入や利益は度外視した単純な売上のことだと覚えておきましょう。売上や受取利息、受取配当金や固定資産売却益などの勘定科目が存在します。「費用」は、収益を得るために必要とした支出のことです。商品の仕入や従業員への給与、通信費や旅費交通費など、様々な勘定科目があります。

4. 押さえておきたい簿記の基礎3:複式簿記

ひと口に簿記といっても、実は「単式簿記」と「複式簿記」の2種類に分かれています。単式簿記は収支のみをシンプルに記載したものであり、初心者でも比較的分かりやすい形式になっているのですが、取引の詳細が分かりにくいという難点があります。取引は単なる1つの事象ではなく、例えば「商品を仕入れて現金を支払った」というように事実(現金を支払った)とその理由(商品を仕入れて)が存在するのです。単式簿記のシンプルな記入方法では、取引の2つの側面を記録することができません。このため、一般的な企業では複式簿記が用いられるケースが多いと覚えておきましょう。
複式簿記には借方と貸方の2つの記入欄があり、仕訳をすることでそれぞれ勘定科目を記載できるだけでなく、必ず双方の金額も一致します。ルールにしたがって記載するだけで、取引における2つの側面まで詳しく記録できるというわけです。単式簿記よりも記入方法などは複雑で難しくなるのですが、正しい決算書を作成するためには非常に役立つので、複式簿記のやり方を基礎からマスターしておいて損はありません。

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