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簿記における費用

簿記の「費用」の仕訳はどうしたらいい?収益との関係とともに理解しよう!

簿記の処理では、会社の取引一つ一つに対応する仕訳を作成する必要があります。そのため、簿記を理解するためには仕訳の理解が欠かせません。特に、費用の仕訳が重要です。しかし、なかには簿記の費用の仕訳をどのように行えばよいか分からない人もいるでしょう。そこで、費用の仕訳を理解するために必要となる収益の考え方についても解説します。

1. 簿記の「費用」とは?

簿記における費用とは、会社が売上などの収益を得るために使った経費支出のことです。会社は、収益をあげることで利益を獲得し、企業活動を継続的に行っていく必要があります。収益をあげるためには、売るための商品や材料などの仕入代金や、人件費、消耗品、宣伝コストなどを支払っていくことが必要です。基本的には、収益獲得のために必要となる直接的な支出が費用となります。ただし、全ての支出が費用となるわけではありません。費用として認められるためには、一定の決まりに基づいて判断する必要があります。
費用は、収益をあげて最終的には利益を獲得するために支出するものです。しかし、支出に基づいて費用を計上しても、その段階では利益を計算することはできません。最終的に売上などの収益が確定し、その収益と費用の差額を把握することで利益が分かるのです。費用より収益が多ければ会社として利益があったと判断できます。費用の発生は、会社が経営を進めていくための資金が減少してしまう要因の1つとなることも知っておくとよいでしょう。

2. 簿記の費用と収益の関係

簿記における費用を理解するためには、費用と関係が深い収益についても理解しておくことが欠かせません。ここでは、費用と収益の関係について説明します。

Ⅰ. 簿記の「収益」の意味

収益は、費用と同じく簿記では欠かせない要素ですが、収益と費用の特徴は異なります。収益とは、会社の活動によって生まれる収入のことだと理解すればよいでしょう。収益の代表的な具体例は、売上です。商品やサービスを売ったことにより売上高が増加すれば、会社としての収入が増えることになります。また、売上以外にも収益科目はあります。例えば、預金や債券などからの受取利息や、建物や機械などの固定資産を売却したときに生じる固定資産売却益などです。
収益が増えることによって、資金が会社に流入することになります。つまり、収益の増加は会社資本の増強につながるのです。会社の資本は、換金価値があるプラスの財産と借金などのマイナスの差額である純資産の勘定科目で処理される仕組みとなっています。簿記の世界では、収益と利益は別物として取り扱うルールです。収益とは、会社に入ってくるお金そのものを指します。一方、利益とは、入ってきたお金から支出したお金を差し引いて残った儲けのことです。両者の違いを把握しておかないと、収益や費用、利益の関係が分からなくなってしまいます。混同しないように確実に理解しておくことが大切です。

Ⅱ. 損益計算書とは?

費用と収益の関係を深く理解したい場合は、損益計算書の仕組みを把握しておくと役に立ちます。費用と収益は、損益計算書に欠かせない構成要素となっているからです。損益計算書とは、会社の経営成績を表す財務諸表の一つであり、会計期間における会社の利益がいくらだったかを示す計算書です。代表的な決算書であり、もう1つの代表的な決算書である貸借対照表と合わせて確認することで、会社の経営成績や財政状態を総合的に判断することができます。
貸借対照表は、会計期間末におけるプラスの財産である資産やマイナス財産である負債、その差額としての純資産の残高を示す書類です。設立してからの資産・負債・純資産の増減を全て反映した財産の一覧表だと理解すればよいでしょう。一方、損益計算書は、1年間の収入・支出の状況を示す書類です。貸借対照表が表しているものは財産の状態であるため、会社のストックの状況が分かります。損益計算書は、1年間のお金の流れが分かるためフローを表す計算書です。簿記の処理を行うにあたっては、それぞれの位置づけを認識しておくことが重要になります。

Ⅲ. 費用と収益が表すこと

簿記の処理を行うにあたっては、借方に費用を計上し、貸方に収益を計上することになっています。借方の費用と貸方の収益を最終的に損益計算書にまとめることによって、費用総額と収益総額の差が分かります。これが会社の利益です。ここで認識しておくポイントは、2つあります。1つは、収益と利益は異なるという点です。両者の違いを把握するためには、収益と利益が損益計算書上でどのように取り扱われているかを理解することが欠かせません。
もう1つのポイントは、利益は収益から費用を引いて計算するということです。利益は、会社の成績にあたるものです。その利益を計算する過程で、費用と収益を正確に集計することが求められます。費用と収益の関係が分かれば、費用を低く抑えることが利益の増加につながることが分かるでしょう。また、一定の費用でできるだけ多くの収益を獲得できれば利益が増えることも分かります。費用をできるだけ低く抑え、多くの収益を獲得することが利益を増やす方法なのです。

3. 簿記の費用に分類される代表的な勘定科目

簿記の処理において費用として計上するべきものは多岐にわたります。費用の種類を表すものが勘定科目です。代表的な費用である勘定科目のうち6つを挙げて解説します。1つ目は、仕入です。商品の仕入代金を表す勘定科目になります。2つ目は広告宣伝費です。売上を獲得するためには、適切な広告宣伝も必要になってくる場合があります。新聞やチラシ、ポスターによる広告を行う場合のこれらの媒体に載せるための支出などが該当します。3つ目は給料です。会社の従業員に支払うお金も費用として処理します。
4つ目は、旅費交通費です。営業が出張で使用する交通費や宿泊代などがこれにあたります。5つ目は通信費です。ビジネスの世界では、顧客や仕入先などとの連絡は欠かせません。収益を獲得するために使用する電話代や郵送費、インターネット接続料などは通信費として処理します。6つ目は、支払家賃です。店舗や倉庫などを賃貸で利用している場合の賃料は支払家賃という勘定科目を使用します。

4. 簿記の費用の仕訳の仕方

仕入や給料、旅費交通費などの費用が発生した場合は、費用が増加したという処理を行います。しかし、簿記の処理においては、費用の発生を把握するだけでなく、資金が減少するなどの資産の減少も認識することが必要です。そのため、費用が発生したときには、借方に費用(費用の増加)、貸方に資産(資産の減少)という仕訳を作成することになります。これが複式簿記と呼ばれる仕組みです。例えば、新聞に広告を掲載するために現金40万円を支払った場合は、借方に広告宣伝費40万円、貸方に現金40万円という仕訳を作成します。
また、支払った費用がキャンセルなどにより無くなった場合など、費用が減少する取引もあります。この場合は、費用の取消処理を行うことが必要です。取消の処理を行う場合は、費用発生時の仕訳と貸借が逆になる仕訳を作成します。費用に関する仕訳処理のポイントは、費用が増加した場合は借方に費用を計上し、費用が減少した場合は貸方に費用を計上することです。

5. 費用と収益の関係を理解して簿記の仕訳をしよう

簿記のルールを正しく理解して費用の仕訳を確実に作成するためには、費用と関係が深い収益に関する知識も必要になります。簿記の仕組みが分かれば、会社の経営成績や財政状態を理解できることにつながるでしょう。そのためには、簿記の講座を受講して細かい考え方までしっかりと確認することが近道です。費用と収益の関係、特に費用収益対応の原則を理解して、正しい簿記の仕訳作成ができるようになりましょう。

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