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fpと簿記

fpと簿記ならどちらを優先?就職に活かすならダブルライセンス?

fp(ファイナンシャル・プランナー)と簿記の資格は、どちらも就職するときに持っていると有利に働いてくれることは、広く知られている事実です。ではいったい、二つのうちのどちらの資格を先に取得したほうがいいのでしょうか。そこでこちらでは、どちらの資格のほうが仕事に活かしやすいのか、ダブルライセンスを目指すべきなのかなどについて説明していきます。

1. 万能で企業の求人が多い簿記

先ず簿記はどのような資格なのか、そして、取得すると身につくスキルについて分かりやすく解説します。

Ⅰ. そもそも簿記ってなに?

簿記もfpもお金に関係する資格ですが、簿記では会社のお金に関する知識を取り上げています。企業における取引を記録する帳簿管理や、決算書を作るときに必要となるスキルなどを学ぶのです。毎日の営業活動を記録したり計算したりすることによって整理し、会社の経営成績や財政状態を明確にまとめる技能を身に付けます。簿記は、企業の規模や業種を限定することはありませんし、どの業態にも必要となる万能ともいえる技能です。

Ⅱ. 簿記取得のメリットは?

簿記を学ぶと、経理事務を行うのに必要な会計知識や専門用語などが身につきます。さらに、財務諸表を読み取ることができるようになります。会社がどのくらい儲かっていて、いくらの借金があり、どの程度の資金を運転しているのかが分かるのです。経営管理の基礎や分析力なども備わります。また、コストに関するセンスも身につくので、コストに意識を向けながら仕事ができるようになります。コスト意識はビジネスの基本にもなりますが、消費者の立場にあるときにも役立つスキルです。あらゆるコストに目を向けることができると、例えば、売られている商品の価格が妥当であるかを判断することも可能になるからです。簿記は、企業人として求められることが多い技能ではなく、社会人全般に役立つ技能だといえるでしょう。

2. 金融機関の就職を目指すならfp

fpは実際にどんな仕事をしているのか、また、主にどのような場で活躍できるのかについて解説します。

Ⅰ. fpの仕事と資格について

fpは、個人の暮らしとお金をメインに扱います。個人が持つ将来のプランや目標などについて、お金の悩みをサポートしたり、問題点の解決策を提案したりするスペシャリストです。様々な家族形態やライフステージの人々を相手にし、ライフプランを基にした収入と支出を予測します。その上で、その人に最適な資産運用の方法や保険などのプランをアドバイスするのです。fpには、住宅ローンや年金、税制についての知識が必要です。相続に関する深い知識を求められることもあります。fp資格の取得には、個人の暮らしとお金にまつわる広い専門知識を身につけていることになります。

Ⅱ. 需要が多いのはどんな業界?

fpが持っている知識は、資産運用から税金に至るまで、身近にあるお金についての様々な情報をカバーしています。それゆえ、銀行や証券会社、保険会社などの、金融機関での需要が多くなっています。住宅メーカーをはじめとする不動産関係の企業で働くことを希望する人にもおすすめです。税理士や中小企業診断士として仕事をしている人が、fp資格を取得するケースもあります。本来の職務に加えてfpの知識を活かした的確なアドバイスができるため、仕事の幅も広がります。

3. どちらか一方なら潰しの利く簿記

fpと簿記のうち、漠然とどちらか片方だけ取得したいという場合は、潰しが利く簿記を選ぶのがいいでしょう。なぜなら簿記は、プライベートでも役立つ技能だからです。家計簿をつけて消費行動を記録し、管理する際にも活かすことができます。しかし、就職を有利にするためにどちらか一方の資格を取りたいというケースでは、希望している就職先のカラーに合わせて決めるのが賢明です。働きたい会社が証券会社や保険会社、銀行などの場合は、やはりfpを取得するのがおすすめです。
しかし、ターゲットが絞り込めていないときには、マルチに活躍してくれそうな簿記を選んだほうが可能性も広がります。経理の部署で働くには、会計の知識が不可欠です。どんな会社にも経理に携わる社員が必要なので、簿記は大きな武器になります。営業職に就いた場合でも、簿記の知識は役に立ちます。分析力を活かして取引先の財務状況を把握できれば、最適な営業活動が可能です。商談もまとまりやすくなるため、営業成績のアップにもつなげることができます。また、製造業やIT系の会社でも、会計の知識を持っていたり専門用語を知っていたりすると有利です。ビジネスシーンでもプライベートでも、簿記の資格は広く活躍してくれそうです。

4. 上位資格の取得時期を計算して計画的に学習

fp技能検定は3級~1級が、簿記には3級~1級に加えて初級があります。数字が小さくなるにつれて上位資格となりますが、スキルの高さを証明するためには2級以上の資格取得が必要です。簿記2級を受験する際には制限はなく、年齢、性別、学歴などは不問です。2級と3級を併願したい人は、一度に両方とも受けることができます。一方、fpの2級を受験したい場合には、受験資格が決められています。fpの3級に合格しているか、fpとしての実務経験が2年以上あることが条件です。もし、下位の試験から順番に受けて、基礎から知識を積み上げていきたいとします。その場合には、最終目標となる2級にはいつまでに合格していなければならないのかを、最初に逆算しなければなりません。ゴールを見据えてプランを立て、計画的に着実に学びを進めていくことが大切です。
試験の日程ですが、簿記3級~2級、fp3級~2級とも、それぞれ年に3回実施されています。簿記3級では商業簿記、簿記2級では商業簿記と工業簿記の試験となり、両級とも制限時間は2時間で合格基準は70%以上です。fpの検定は、学科と実技に分かれています。3級では学科も実技もマークシート形式で出題されますが、2級では実技は記述式になっています。学科試験は両級とも2時間で、3級の実技は1時間、2級の実技は1時間半の制限時間です。学科は60点満点で36点以上、実技は100点満点で60点以上が合格基準とされています。

5. fpと簿記のダブルライセンスはメリット大

fpと簿記をダブルライセンスで取得することができると、当然メリットは大きくなります。簿記では企業のお金について学ぶことになるため、法人でのお金の流れしかターゲットにしていません。そのため、法人の仕訳に関しては詳しくなりますが、個人の仕訳についてはカバーしないのです。個人の所得税や住民税などについては専門外になってしまいます。たとえば、企業で経理をおこなう部署に配属されると、仕事で所得税や住民税の計算も行わなければなりません。簿記の知識だけだと、そこが手薄になってしまうのです。
fpでは、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表に関しては、それほど詳しく学ぶことはしません。財務諸表にスポットを当てて見た場合だと、fp取得者よりも簿記3級取得者のほうが詳しい知識を身につけていることになります。簿記とfpの両方のカリキュラムを学んで、企業だけではなく個人のお金に関する知識を持つことができれば、仕事の幅を格段に広げることも可能になるわけです。

6. まずは一方の2級取得を目指そう

fpも簿記も、就職の際に評価してもらうためには2級以上の資格を取ることが必要です。もし、ダブルライセンスを目指したい場合であっても、まずは勉強してfpか簿記の2級を取得すると、就職には有利に働きます。いずれか一方の2級に合格し、取得した資格を活かしながら実務経験を積みましょう。その上で、もう片方の2級を目指し、ダブルライセンス取得というコースがおすすめです。

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