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簿記1級の難易度

簿記1級取得の難易度が高い理由とは?

日商簿記検定には、簿記1級~3級と初級がありますが、この中でも最も難易度が高いと言われているのが「簿記1級」です。簿記2級でも決して簡単ではありませんが、簿記1級はそれをはるかに上回る難易度で、合格率もかなり下がります。この記事では、簿記1級の難易度が高い理由や、その合格率、勉強時間の目安などについて紹介します。

1. 簿記1級を取得することについて

まずは、簿記1級を取得することについて紹介していきます。

Ⅰ. 簿記1級合格者に期待されるレベル

簿記1級が対象としているレベルは、まず、「税理士や公認会計士を目指している人」です。なぜなら、簿記1級は、税理士試験の受験資格となる所定の学歴や職歴を満たしていない場合に、税理士試験の受験要件として必須となるうえ、公認会計士の資格取得においても勉強する分野が重なるケースが多く、模擬試験として簿記1級を受けることが多いからです。また、「大企業の経理担当者レベルの人」も対象となります。逆に言えば、複雑な経理業務を担当しない人は想定されていないため、その分難易度も上がるということです。
具体的な学習内容でいうと、商業簿記や会計学、工業簿記、原価計算などの論点を高いレベルで理解し、会計基準や会社法、財務諸表等規則といった企業会計に関する法規を理解したうえで、経営管理や経営分析ができるレベルが求められます。これは、概ね大学や大学院などで簿記を専門として修了した人と同レベルの知識と言えるでしょう。
簿記1級では、当然ながら簿記2級や簿記3級の知識を身につけているという前提で出題がなされます。ですから、いきなり簿記3級や簿記2級を飛ばして、簿記1級から受けても合格するのは困難です。制度上は簿記3級や簿記2級を取得していなくても挑戦することはできますが、基本的な知識をきちんと学んだうえで、簿記1級の新しい知識を吸収していく必要があるでしょう。

Ⅱ. 日商簿記1級に合格すると税理士試験を受験できる

前述したように、税理士試験の受験資格には所定の学歴や職歴が条件として設定されていますが、簿記1級を取得していれば受験資格を取得できます。こうしたことから、簿記1級は、税理士や公認会計士を目指す人にとっては1つの登竜門と言われています。税理士と違って公認会計士試験を受験要件に簿記1級は関係ありませんが、公認会計士試験を想定した模擬試験として受ける人が非常に多くなっています。確かに難易度は高いですがその価値も高く、特に会計のプロを目指すなら取得しておいて損はないでしょう。

Ⅲ. 簿記1級の合格率

簿記1級の合格率は約10%と言われており、これは簿記2級の合格率が15~30%、簿記3級の合格率が約40~50%であることを考えると、相当な難易度の高さといえます。この合格率は、税理士や公認会計士といった試験と比べても遜色がないほどで、難関国家試験並の難易度と言えるでしょう。
では、なぜこれほど合格率が低いかというと、1科目でも得点率40%を下回る科目があると落とされるという足切りの制度があることも要因の一つとなっています。つまり、合計得点さえ高ければいいわけではなく、満遍なく全ての分野を勉強しておかなければいけないのです。ですから、簿記1級に合格するためには、極端な苦手科目をなくしておく必要があるのです。簿記1級は勉強範囲も他の級と比べて広いので、簿記2級や簿記3級と同じ感覚で勉強していては合格することは難しいでしょう。

2. 簿記1級の難易度が高い理由

続いては、簿記1級の難易度が高い理由について紹介していきます。

Ⅰ. 簿記1級は出題範囲が広い

簿記1級の難易度が高い理由の1つ目は、「出題範囲が広い」ということです。簿記1級の試験は、簿記2級の試験範囲である商業簿記や工業簿記に加え、会計学と原価計算の2科目が追加されて合計4科目となります。4科目と聞くと少なく感じるかもしれませんが、それぞれの科目の詳細な試験範囲を見るとその量は膨大で、デリバティブ取引やヘッジ会計など簿記2級の試験範囲に様々な分野が追加されているのです。
また、求められる知識レベルも高くなっており、論点では大企業レベルの経理や財務知識が求められ、簿記2級~簿記3級までのように一般的な知識でどうにかなる内容ではありません。さらに、商業簿記や会計学においても、グローバル展開をしている企業や海外進出をしている大企業レベルの会計知識が求められます。加えて、工業簿記や原価計算の論点においては、大規模設備投資を行う大手企業レベルの財務知識が求められるなど、その出題範囲の広さは、簿記1級の難易度を大きく高めているのです。

Ⅱ. 簿記1級の出題範囲に比べると試験時間が短い

簿記1級の難易度が高い理由の2つ目は、「試験時間が短い」ということです。上記で、簿記1級の試験範囲が広いと述べましたが、その範囲の広さを考えると試験時間は短いと言えます。簿記2級の試験時間は120分ですが、簿記1級は180分であり、わずか60分しか増えていません。60分増えたと聞くと余裕に感じるかもしれませんが、簿記1級と簿記2級の試験範囲の差はそれ以上に大きいのです。180分の内訳は、商業簿記・会計学が90分、工業簿記・原価計算が90分となっており、試験時間がそれぞれ分かれています。ですから、時間配分を考えて回答しないと、後から戻って解き直すということができないのです。簿記1級は、このような長時間の思考にも耐えうる強い集中力も求められる試験といえるでしょう。

Ⅲ. 簿記1級が受けられるのは年に2回だけ

簿記1級の難易度が高い理由の3つ目は、「受験できる回数が少ない」ということです。簿記1級は、1年で6月と11月の2回しか実施されていません。これは、簿記2級と簿記3級の試験が2月、6月、11月の年に3回実施されていることを考えると少なく、それだけ合格できるチャンスが減るということです。また、あまりにも試験の日程が空いてしまうと、一度試験に落ちて再受験しようというときに、モチベーションが下がってしまう可能性もあります。中には、そのまま受験をやめてしまう人も少なくありません。ただでさえ試験範囲も広くて、求められる知識レベルも高い簿記1級の試験回数が少ないということも、難易度が高くなる要因の一つとなっています。

3. 簿記1級の試験勉強はスクールの利用がおすすめ

簿記1級の勉強方法には主に、「独学」や「スクールを利用する」方法などがありますが、独学での勉強はかなり難しいといえます。なぜなら、簿記1級の全ての試験範囲を勉強するためには、少なくとも500時間~600時間の学習時間が必要とされるため、モチベーションの維持も大変なうえに、効率的な勉強方法も分からないことが多いからです。その点、スクールを利用すれば、プロに効率よく正しい勉強方法を教えてもらえるし、間違った知識を身につけてしまうこともなくなります。また、試験合格に向けた教材が揃っていることや、最新の情報やテキストが手に入ること、自分の生活スタイルに合わせた学習スケジュールを組んでくれることなどのメリットがあるのも見逃せません。
確かに、独学での勉強よりもお金はかかりますが、ある程度の実務経験を積んだうえで簿記1級を取得してしまえば、転職にも繋がり、その後の収入で元をとることができるでしょう。スクールにかけるお金を惜しんでしまったがために、簿記1級に合格できず、後のキャリアアップのチャンスを逃してしまうかもしれません。少しでも独学に不安があるのなら、スクールで効率よく簿記1級合格を目指すのがいいでしょう。簿記1級に合格するためのスクールは、「資格の学校TAC」や「資格の大原」がおすすめです。

難易度は高くても価値のある簿記1級

簿記1級の難易度は確かに高いですが、就職や転職に有利になることや、キャリアアップに繋がることなど、苦労して取得するだけの価値がある資格です。ただし、確実に合格を目指すなら、独学での勉強はおすすめしません。多少の出費は惜しまず、スクールへの通学をすることで、簿記1級の取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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