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決算書の読み方

簿記の基本が分かれば決算書や財務諸表の読み方が理解できる!

決算書や財務諸表に読み方を理解できるようにしておくことは、会社や取引先の経営状況の把握や投資先の判断の際に役立つため、ビジネスパーソンにとっては最低限知っておくべき知識です。そこで、この記事では、決算書や財務諸表の読み方の解説とともに、これらの書類の作成のベースである簿記のポイントについて詳しく紹介します。

1. 決算書と財務諸表の違いについて

決算は、規模や形態に関わらず会社が毎年定期的に行わなければいけない義務です。決算の際に会社は様々な書類を作成する必要があり、その中に決算書や財務諸表があります。決算時に作るこれらの書類によって、1年間の経営成績や財政状態などを、利害関係のある人たちに報告しなければいけません。どちらも、決算期ごとに作られる書類で、ともに会社の経営活動を報告するために作成するものです。ただし、書類の提出先や使い方によって種類が異なっています。一般的には、決算書と財務諸表は同じ意味で使われていますが、細かく区別する場合には、決算書と財務諸表の書類の種類が異なるため、分けて考えなければいけません。そこで、ここでは、違いを把握するために知っておきたい決算書と財務諸表のそれぞれの特徴について解説します。

Ⅰ. 決算書とは

税務申告を法人が行う場合、決算申告が必要です。決算申告では申告書の作成が求められていて、その際に必要とされるのが決算書となります。財務諸表と異なっている点の1つが、定められている法律です。決算書は法人税法や消費税法といった会社の税金に関わる税法に関連しています。また、該当する書類にも違いが見られます。法律上で決算書に含まれているのは、主に4つの書類です。 1つ目が会社の財産や負債などを知ることができる「貸借対照表」、2つ目が会社の収益や費用がわかる「損益計算書」となります。3つ目が貸借対照表の勘定科目のうち純資産についての変動を表した「株主資本等変動計算書」です。そして、4つ目に貸借対照表と損益計算書の勘定科目におけるそれぞれの内訳の明細を記載した「勘定科目内訳明細書」があります。加えて、決算書は提出先も財務諸表とは違っています。決算書を提出するのは、会社の住所を置く管轄の税務署です。

Ⅱ. 財務諸表とは

財務諸表は、会社の経営状況を把握するためだけではなく、融資や投資などの判断にも必要となる書類です。取引先が取引を今後どのようにするべきかを考えたり、金融機関がその会社への融資の可否を決めたりするときなどに利用されます。さらに、株主や投資家などにとっても出資や株の購入などを決断する大事な判断材料です。そのため、これらの人が閲覧できるように公開しなければいけません。
また、財務諸表について定められている法律は金融商品取引法であり、該当する書類は5つあります。1つ目が「貸借対照表」、2つ目が「損益計算書」、3つ目が「株主資本等変動計算書」で、ここまでは決算書と同じです。決算書と異なっているのは4つ目の「キャッシュフロー計算書」と、5つ目の「付属明細表」の2つの書類となります。キャッシュフロー計算書は、会計期間中のお金の増減を表したものです。一方、付属明細表とは貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書といった書類に記載された内容では不足している事項について補足して記されている書類をいいます。提出する先は財務省財務局となります。

2. 決算書や財務諸表から読み取れること

決算書や財務諸表の読み方を理解できると財務分析ができるようになります。収益力や財政状態を把握でき、会社の安全性や成長性などを測ることが可能です。経営する立場や経理に関わる業務を行っていると、客観的な視点で見られる財務状況は経営における問題点を見つける助けとなるため、事前に対策を立てることができ便利に使えます。また、取引先の企業にとっては、財政状態が分かるので貸し倒れなどのリスクを防ぐための重要な資料です。さらに、株主や投資家、金融機関などは、企業の業績を把握し今後の成長性を予測しやすくなるので出資などの決断の参考にできます。 また、財務分析の際には、財務分析指標を用いることによって、決算書の数字から様々な情報を得ることができます。財務分析の観点は大きく5つあり、例えば、会社が利益をどれくらいあげているのかを見るのが収益性分析です。収益性分析は取引収益性と資本収益性に分けられ、資本に対する収益性を知りたい場合には資本収益性をチェックします。さらに、資本収益性には2種類の指標があり、そのうちの1つがROAと呼ばれる総資本経常利益率です。総資本経常利益率は、会社の投入資金に対する利益の割合を示すもので、経常利益を総資本で割ることにより算出できます。 このほかにも、財務分析指標を通して安全性や活動性、生産性、成長性などを見ることができ、財務分析から会社の企業価値を知ることが可能です。そのため、投資の際の判断指標としても利用することができます。このように、ビジネスのなかで大事な情報源となっているのが決算書や財務諸表です。では、これらの書類はどのように作られるのでしょうか。ここからは、決算書と財務諸表の作成までの流れや書類の読み方のポイントなどについて解説します。

Ⅰ. これらの書類は簿記で作られる

会社は、経営状況を明らかにするために、定められた期間に従って、決算書や財務諸表を作成しなければいけません。原則として、中小企業であれば年に1回の頻度で作ります。対して、上場企業であれば、半期ごとに中間決算を行い、3ヶ月に1度で四半期決算が必要です。定期的に作成が求められる決算書や財務諸表は、簿記をもとに作られます。簿記とは、経営や財政の状況を明らかにするための方法です。日々の経営活動のなかで生じる取引について記録を行い、一定期間について整理し試算表を作成したら、決算手続きを行うことで完成となります。

Ⅱ. 決算書の読み方を理解するためには簿記が必須

決算書や財務諸表の読み方を理解できるようになれば、企業がどのような状態にあるのかについて、経営状況の動きを数値の変化に基づき把握できるようになります。また、その内容から問題点や改善すべき課題などに気付くことができるため、今後の経営の在り方などについても対策を取ることが可能です。ただし、正しく分析をするためには、書類に出てくる数字のうち、どんな場合にどれを使って解析すべきかをしっかりと知っておかなければいけません。誤った数字を使うと正しい評価ができなくなり、間違った判断をしてしまうことになります。書類を作成する際のルールは会社や業種によって異なるため、十分に注意しましょう。書類から数字を正しく読み取るためには簿記の知識が必要となります。

Ⅲ. 損益計算書の読み方のポイント

決算書にも財務諸表にも含まれる損益計算書において最も注目すべき読み方のポイントは経常利益です。経常利益とは経常的に行っている事業によって得たすべての利益を表します。つまり、会社がどれだけ儲けを得たかということです。同じ利益を表す数字に当期純利益がありますが、これには通常の本業では出ない特別損益が計上されるため、経常的な経営利益の判断材料としては適していません。あくまでも経常利益の高さが、儲かっている会社であるかを判断できる数字です。 ただし、経常利益の絶対値のみに注目することは避けましょう。売上高から変動費を差し引いた限界利益に対して経常利益が占める割合が小さいと、売上の少しの減少でも経営が赤字になってしまう可能性があります。そのような場合には経営状況を正しく判断できません。経常利益の数字に振り回されずに、経営安全率に着目するようにしましょう。経営安全率とは限界利益のうち経常利益がどれくらい占めているかを示した割合です。また、限界利益の絶対値については比較することが有効な方法となります。異業種の企業の限界利益をチェックすることで会社の事業規模を比べることが可能です。

Ⅳ. 貸借対照表の読み方のポイント

貸借対照表も、決算書と財務諸表の両方に含まれる大事な書類です。貸借対照表の読み方のポイントは、資本の運用状況、資本の調達先、他人資本と自己資本の4つとなります。具体的には、まず自己資本比率をチェックすることは大切となります。自己資本比率とは会社の資金力を知ることができる数字です。返済が必要でない資本を、自己資本と他人資本を合わせた総資本で割って算出し、自己資本比率が高いほど経営の安定性も高いことを示します。目安としては、40%を超える割合だと倒産のリスクが低い会社です。金融機関が会社に融資できるかどうかを判断する際には、会社の安定性を判断するための重要な参考資料となる貸借対照表を確認します。金融機関にとって、倒産の可能性のある会社への融資はリスクが高いからです。

3. 決算書や財務諸表を正しく理解できるよう簿記を学ぼう

決算書や財務諸表を正しい読み方を学ぶためには、決算書や財務諸表を作るベースとなる簿記の知識は必須です。会社や業種によっては書類に多少の違いはあるものの、基本は同じであるため、数字を使った読み方が理解できる簿記の知識は学んでおいたほうが良いでしょう。「日商簿記3級独学教室」なら忙しくて十分な時間が取れない人でも、気軽に簿記を学ぶことができます。

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