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簿記検定試験の級とレベル

3種類の簿記検定試験の級とレベル

簿記検定試験には、いくつかの種類と級があります。段階を踏んで難易度が上がっていきます。そこで、一般的な簿記検定試験である日商簿記検定試験・全経簿記能力検定試験・全商簿記実務検定試験の3種類について、それぞれの簿記検定試験の各級の内容やレベルについて調べてみました。

1 日商簿記の各級の内容とレベル

日商簿記は、日本商工会議所が主催する最もポピュラーな簿記検定試験です。原価計算・初級・3級・2級・1級の各級があります。

Ⅰ. 日商簿記初級の内容・レベル・標準学習時間・出題傾向
a. 日商簿記初級の内容・レベル・標準学習時間

日商簿記初級の内容・レベル・標準学習時間は次の通りです。

内容 レベル 標準学習時間
日商簿記初級 商業簿記 入門レベル 40時間(1ヶ月)

日商簿記初級の範囲は、商業簿記のみです。日商簿記初級の内容は、仕事の種類に関わらず、ビジネスの基礎知識として、簿記の基本的な用語や複式簿記の仕組みを理解し、仕事に活かせることを目標としています。ごく基本的なレベルの簿記検定試験です。

b. 日商簿記初級の出題傾向

(1)第1問(30点)四択の理論問題10問
(2)第2問(40点)仕訳問題10問
(3)第3問(30点)試算表作成問題

Ⅱ. 日商簿記原価計算の内容・レベル・標準学習時間・出題傾向
a. 日商簿記原価計算の内容・レベル・標準学習時間

日商簿記原価計算の内容・レベル・標準学習時間は次の通りです。

内容 レベル 標準学習時間
日商簿記原価計算 原価計算 入門レベル 40時間(1ヶ月)

日商簿記原価計算の範囲は、原価計算のみです。日商簿記原価計算の内容は、職種に関わらず、管理会計の基礎を学ぶ収益性を理解するための基本的な知識です。原価計算の基本的な用語や、原価と利益の関連を理解し、実務に活用できることを目標としています。ごく基礎的なレベルの簿記検定試験です。

b. 日商簿記原価計算の出題傾向

(1)第1問(44点)語句選択問題13問・仕訳問題1問
(2)第2問(24点)営業計画の作成(変動費・固定費・営業利益・貢献利益・損益分岐点分析)
(3)第3問(32点)製造原価明細と損益計算書の作成

Ⅲ. 日商簿記3級の内容・レベル・標準学習時間・出題傾向
a. 日商簿記3級の内容・レベル・標準学習時間

日商簿記3級の内容・レベル・標準学習時間は次の通りです。

内容 レベル 標準学習時間
日商簿記3級 商業簿記 高校商業科1年生レベル 60~80時間(1~3ヶ月)

日商簿記3級の範囲は、商業簿記のみです。日商簿記3級の内容は、商業簿記の基礎的な知識と、基本的な会計処理方法です。仕訳の仕方・帳簿の作成方法・貸借対照表と損益計算書の作成方法などが範囲に含まれます。
中小企業や個人商店の経理のある程度までの実務ができることを目指しています。日商簿記3級は、経理担当者だけではなく、営業や管理部門の担当者にも必須としている会社もあります。
一般的に、簿記学習の初心者は、日商簿記3級の取得を目指して学習します。就職活動のときに資格として評価してもらえるのも、最低でも日商簿記3級からです。日商簿記検定試験のレベルや他の簿記検定試験のレベルを表現する場合も、日商簿記3級が基準とされています。
日商簿記3級の資格試験としてのレベルは、さほど難易度が高くありません。一般的な人が3ヶ月ぐらいの学習で資格取得をすることができる資格です。誰でも学習すれば取得できるレベルの資格試験です。

b. 日商簿記3級の出題傾向

(1)第1問(20点)仕訳問題5問
(2)第2問(10点)帳簿記入問題等
(3)第3問(30点)試算表作成問題等
(4)第4問(10点)伝票会計等
(5)第5問(30点)精算表作成問題等

Ⅳ. 日商簿記2級の内容・レベル・標準学習時間・出題傾向
a. 日商簿記2級の内容・レベル・標準学習時間

日商簿記2級の内容・レベル・標準学習時間は次の通りです。

内容 レベル 標準学習時間
日商簿記2級 商業簿記・工業簿記 高校商業科卒業レベル 150~200時間(3~6ヶ月)

日商簿記2級の範囲は、商業簿記と工業簿記です。日商簿記2級の内容は、会社の経理担当者や経営管理をする人達の仕事に役に立つ知識と会計処理方法です。
工業簿記は、日商簿記2級から初めて登場します。仕掛品という概念を含んだ工業簿記の仕組みや様々な方法の原価計算などが範囲となります。
日商簿記2級の内容は、中小企業の経理担当者となれることを目指しています。日商簿記2級は、高校商業科卒業レベルと言われています。日商簿記2級は、それほど簡単なレベルの資格とは言えませんが、努力次第で誰でも合格することができるレベルの資格です。
日商簿記2級は、履歴書に書くことで、一定の評価が得られるレベルの資格と言えます。ただし、試験範囲の改定により、日商簿記2級は大幅に学習の範囲が広くなっています。難しい内容が多いので、実質的にレベルは上がったといえます。言い換えると、就職や転職では、日商簿記2級の評価は高くなったといえます。

b. 日商簿記2級の出題傾向

(1)第1問(20点)仕訳問題
(2)第2問(20点)伝票会計やその他の個別論点
(3)第3問(20点)精算表作成問題・財務諸表作成問題
(4)第4問(20点)費目別計算・部門別計算・個別原価計算・本社工場会計・標準原価計算
(5)第5問(20点)総合原価計算・標準原価計算・直接原価計算

Ⅴ. 日商簿記1級の内容とレベル
内容 レベル 標準学習時間
日商簿記1級 商業簿記・会計学
工業簿記・原価計算
大学専門レベル 500~600時間(6ヶ月~1年)

日商簿記1級の範囲は、商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算となります。日商簿記1級の内容は、大企業の簿記です。高度な専門知識や会計処理能力を有し、会計基準などの企業会計に関する法規に関するある程度の知識や理解を持って、経営管理や経営分析ができることを目指しています。
商業簿記・会計学には、会社法や企業会計といった会計に関する法令などの基礎的な理解も範囲に含まれます。工業簿記・原価計算には、資本コストなどのファイナンス理論の基礎的な概念も範囲に含まれます。
日商簿記1級の合格者は、公認会計士や税理士の言っていることが概ね理解できるレベルといわれています。また、日商簿記1級は、大学生など会計を専門的に学ぶ人達に期待すれるレベルの試験とされています。
日商簿記1級は、日商簿記2級に比べて格段に難しいレベルになります。それだけに試験に合格すれば、一定の評価を受けることができるかなりステイタスのあるレベルの簿記資格といえます。
最難関国家資格の一つである公認会計士を目指す人たちにとって、日商簿記1級合格は、ある種の試金石ともいえるようです。日商簿記1級の合格は、国家資格である税理士試験受験資格の一つにもなります。
学習時間の目安は6ヶ月500時間といわれています。ただし、日商簿記2級や日商簿記3級のように多くの人がこの学習時間で合格できるという目安ではありません。
そもそも、日商簿記1級は、難しさに挫折する人のほうが多数派というレベルの試験です。500時間~600時間は、学習内容がすんなり理解できるレベルの人の学習時間だと思って下さい。ちなみに、私は2年間で2,000時間以上は費やしたと思います。

2 全経簿記能力検定試験の各級の内容とレベル

全経簿記能力検定試験は、全国経理教育協会が主催する簿記検定試験です。基礎簿記会計・3級・2級・1級・上級があります。

Ⅰ. 全経簿記基礎簿記会計の内容とレベル
内容 レベル
全経簿記初級 商業簿記 日商簿記初級レベル

全経簿記の基礎簿記会計は、個人経営の美容業や小規模飲食業などを対象としています。基本的な帳簿作成能力や、決算整理のない損益計算書と貸借対照表の作成能力などが試されます。基礎的なレベルの簿記検定試験です。

Ⅱ. 全経簿記3級の内容とレベル
内容 レベル
全経簿記3級 商業簿記 日商簿記初級レベル

全経簿記3級の範囲は、商業簿記のみです。小規模企業の基本的帳簿の作成能力が試されます。簡単な決算整理の方法や損益計算書や貸借対照表を作成などの内容も範囲となります。
全経簿記3級のレベルは、日商簿記初級と同程度のレベルと言われています。基礎的なレベルの簿記検定試験です。

Ⅲ. 全経簿記2級の内容とレベル
内容 レベル
全経簿記2級 商業簿記・工業簿記 日商簿記3級レベル

全経簿記2級の内容は、商業簿記と工業簿記です。中規模企業の経理担当者や経営管理者のとなる能力を目指します。
商業簿記は、資本の調達運用管理のための帳簿の作成や損益計算書や貸借対照表を作成できる能力を試されます。工業簿記は、基本的な帳簿の作成と管理能力を試されます。
全経簿記2級のレベルは、日商簿記3級と同程度のレベルと言われています。勉強すれば合格できるレベルの簿記検定試験です。

Ⅳ. 全経簿記1級の内容とレベル
内容 レベル
全経簿記1級 商業簿記・会計学・原価計算・工業簿記 日商簿記2級レベル

全経簿記1級の内容は、商業簿記・会計学と原価計算・工業簿記です。商業簿記・会計学は、大会社の経理担当者もしくは経営管理者となる能力を目指します。借入れや増資などの財務活動や投資や資金の運用といったものの帳簿作成ができること、税金の計算や決算整理をして財務諸表を作成できること、連結財務諸表の初歩的知識も試されます。
全経簿記1級の原価計算・工業簿記は、製造業の経理担当者又は管理者となる能力を目指します。製造過程の帳簿の作成ができ、製造原価報告書・損益計算書・貸借対照表を作成して管理する能力を試されます。
商業簿記・会計学と原価計算・工業簿記は、どちらか一方の合格後1年以内にもう一方も合格できれば、1級を取得することができます。
全経簿記1級のレベルは、日商簿記2級と同程度のレベルと言われています。やさしいとは言えませんが、努力次第で取得できるレベルの簿記検定試験です。

Ⅴ. 全経簿記上級のレベル
内容 レベル
全経簿記上級 商業簿記・会計学・原価計算・工業簿記 日商簿記1級レベル

全経簿記上級の内容は、商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算です。全経簿記上級の商業簿記・会計学は、上場企業の経理や会計専門職を目標としています。最新の会計基準の理解とそれによる財務諸表の作成能力を要求する試験です。
全経簿記上級の工業簿記・原価計算は、原価理論の理解と原価に関わる簿記や財務諸表の作成能力を要求する試験です。会社の意思決定や業績評価のための会計知識も要求されます。
合格すると、税理士試験の受験資格を取得することができます。試験のレベルは、日商簿記1級のレベルより若干やさしいと言われています。税理士試験の受験資格を取得することを第一目標とする方は、日商簿記1級だけでなく全経簿記上級を受験することも十分検討して下さい。

3 全商簿記実務検定試験の内容とレベル

全商簿記実務検定試験は、全国商業高等学校協会が主催する簿記検定試験です。3級・2級・1級があります。

Ⅰ. 全商簿記3級の内容とレベル
内容 レベル
全商簿記3級 商業簿記 日商簿記初級レベル

全商簿記3級の内容は、商業簿記です。内容は、個人企業の基本的な会計処理です。全商簿記3級のレベルは、日商簿記初級と同程度のレベルと言われています。基礎的なレベルの簿記検定試験と言えます。

Ⅱ. 全商簿記2級の内容とレベル
内容 レベル
全商簿記2級 商業簿記 日商簿記3級レベル

全商簿記2級の内容は、商業簿記です。個人企業の3級より高度な会計処理と株式会社の基本的処理について学びます。全商簿記2級のレベルは、日商簿記3級と同程度のレベルと言われています。勉強すれば誰でも合格できるレベルの簿記検定試験といえます。

Ⅲ. 全商簿記1級の内容とレベル
内容 レベル
全商簿記1級 会計・原価計算 日商簿記2級レベル

全商簿記1級の内容は、会計と原価計算です。会計の内容は、株式会社の会計処理や会計法規についてです。原価計算の内容は、製造業の原価の計算手続きです。
全商簿記実務検定試験1級は、科目合格制となっています。片方合格後、4回目までに開催される試験に合格すれば、全商簿記1級の取得ができます。合格により推薦入学できる大学や短大があります。
全商簿記1級のレベルは、日商簿記2級より少しやさしいレベルと言われています。やさしい試験とは言えませんが、努力次第で誰でも取得が可能なレベルの簿記検定試験です。

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