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受取家賃(うけとりやちん)

受取家賃とは、建物の貸付により発生する収益に属する勘定科目です。受取家賃は、原則として損益計算書に営業外収益として計上します。ただし、主たる営業活動が不動産賃貸業の場合は、受取家賃ではなく売上高として計上します。消費税法上、事業用建物の受取家賃は課税されますが、居住用建物の受取家賃は非課税です。

事業用建物の受取家賃の繰延べ

今期に受け取った受取家賃の中に次期の受取家賃が含まれている場合は、決算整理仕訳で前受収益として次期へ繰り延べます。費用収益対応の原則に基づき、正しく期間損益計算を行います。受取家賃に関する決算整理仕訳は次の通りとなります。

1. 決算日

決算日において、次期の事業用建物の受取家賃150,000円(税抜)を貰っていた。消費税は10%とする。

借方 金額 貸方 金額
受取家賃 150,000 前受収益 165,000
仮受消費税 15,000

受取家賃(収益)が150,000円減少し、仮受消費税が15,000円減少し、前受収益(負債)が
165,000円増加します。

2. 翌期首

借方 金額 貸方 金額
前受収益 165,000 受取家賃 150,000
仮受消費税 15,000

決算日の決算整理仕訳の反対仕訳をします。前受収益(負債)が165,000円減少し、受取家賃(収益)が150,000円増加し、仮受消費税が15,000円増加します。

居住用建物の受取家賃の繰延べ

1. 決算日

決算日において、次期の居住用建物の受取家賃150,000円(非課税)を貰っていた。

借方 金額 貸方 金額
受取家賃 150,000 前受収益 150,000

受取家賃(収益)が150,000円減少し、前受収益(負債)が150,000円増加します。

2. 翌期首

借方 金額 貸方 金額
前受収益 150,000 受取家賃 150,000

決算日の決算整理仕訳の反対仕訳をします。前受収益(負債)が150,000円減少し、受取家賃(収益)が150,000円増加します。

受取家賃と所得税法

会計上は前受収益(負債)となる次期の受取家賃ですが、所得税法では、所得税基本通達36-5により、原則として、次の時期に収益計上することになっています。
(1)契約により支払日が定められているものについてはその支払日
(2)支払日が定められていないものについてはその支払いを受けた日
(3)請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求日
例えば、翌月分の家賃を前月末までに受け取る契約になっている場合において、翌年1月分の家賃を12月末(所得税法上の個人の決算日)までに受け取ったときは、原則として、前受収益とせず、当期の受取家賃として収益計上する点に注意が必要です。つまり、所得税法は、受取家賃のような不動産収入について、会計のように発生主義ではなく、原則として現金主義を適用しています。
ただし、所得税法は、例外的に「個別通達(不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について)」により、継続適用を条件として発生主義で収益計上することを認めていますので、結果として現金主義でも発生主義でも適法ということになります。つまり、12月末までに受け取った翌年1月分の受取家賃を毎期継続して前受収益としている場合は、所得税法上適法となります。

事業用建物の受取家賃の見越し

今期に貰うべき受取家賃を決算日現在貰えていない場合、決算整理仕訳で当期の収益として計上します。受取家賃に関する決算整理仕訳は次の通りとなります。

1. 決算日

決算日において、当期の事業用建物の受取家賃150,000円(税抜)が未収である。消費税は10%とする。

借方 金額 貸方 金額
未収収益 165,000 受取家賃 150,000
仮受消費税 15,000

未収収益(資産)が165,000円増加し、受取家賃(収益)が150,000円増加し、仮受消費税が
15,000円増加します。

2. 翌期首

借方 金額 貸方 金額
受取家賃 150,000 未収収益 165,000
仮受消費税 15,000

決算日の決算整理仕訳の反対仕訳をします。受取家賃(収益)が150,000円減少し、仮受消費税が15,000円減少し、未収収益(資産)が165,000円減少します。

居住用建物の受取家賃の見越し

1. 決算日

決算日において、当期の居住用建物の受取家賃150,000円(非課税)が未収である。

借方 金額 貸方 金額
未収収益 150,000 受取家賃 150,000

未収収益(資産)が150,000円増加し、受取家賃(収益)が150,000円増加します。

2. 翌期首

借方 金額 貸方 金額
受取家賃 150,000 未収収益 150,000

決算日の決算整理仕訳の反対仕訳をします。受取家賃(収益)が150,000円減少し、未収収益(資産)が150,000円減少します。

 

法人が従業員に社宅や寮を貸す場合の受取家賃

法人が従業員に対して社宅や寮を貸す場合には、法人税法上、従業員から1ヶ月当たり下記(1)~(3)の合計額(正確には「賃貸料相当額」と言います。)以上の金額の受取家賃があれば給与として課税されません。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
従業員に無償で社宅や寮を貸す場合には、上記の賃貸料相当額が給与として課税されます。従業員から賃貸料相当額より低い受取家賃をもらっている場合には、受取家賃と賃貸料相当額との差額が、原則として給与として課税されますが、従業員からの受取家賃が、賃貸料相当額の50%以上で場合は、受取家賃と賃貸料相当額の差額は、例外的に給与として課税されません。
法人所有の社宅や寮を従業員に貸す場合だけでなく、法人が外部の貸主から建物を借りて従業員に社宅や寮として提供する場合も、従業員から賃料相当額以上の受取家賃をもらう必要があるため、貸主に固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。

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